スタイルシートは,HTML文書(いわいるホームページ)のルックス(表示結果)を調整するための仕組みです。スタイルシートを記述し,それをHTML文書に付け加えるだけで,HTML文書の表示結果は劇的に変化します。そんな例を,ひとつご紹介しましょう。
「カスケーディング・スタイルシート(CSS)」は,W3Cが推奨しているHTML用のスタイルシート規格です。レベル1のCSS(CSS1)だけでも,文書中の任意の部分に関して,以下のプロパティ(property)ごとにスタイルを調整できます。
- ◆フォント系
- フォントファミリー,サイズ,太さ,斜体,スモールキャピタル,行幅
- ◆色と背景効果系
- 前景色(文字色),背景色,背景画像の調整
- ◆テキスト属性系
- 単語間隔,文字間隔,下線など,垂直位置(上付き下付き),水平位置そろえ(右そろえ,左そろえ),大文字小文字,行頭インデント
- ◆ボックス系
- マージン・パディング,ボーダー(枠線)
- ◆表示位置調整
- 表示の横幅,縦幅,フロートと回り込み,回り込みの解除
- ◆その他の表示調整系
- 表示形式,空白の取り扱い,リストマークの調整
スタイルシートは,簡単な英単語だけでスタイルを指示する,大変直感的なものです。マージンなら「margin:1cm」などと書くだけ。学習は容易です。
Netscape NavigatorやInternet Explorerの標準的な見栄え設定では,段落(P要素)の開始/終了は1行分の余白で表現され,行間はぴっちり詰まっています。また,強調部分(STRONG要素)は太字で表現されます。
ところが,スタイルシートを用いれば,次のように変更できます。ほんの少しの変更ですが,文章の「締まり具合」がずいぶん違うと思いませんか?
ここで使ったシートは,次のようにカンタンなものです。
− − − − − − − − − − − − − P{ text-indent: 1em; /*行頭に1文字分の字下げ*/ line-height: 1.5em; /*行幅は1.5文字分*/ margin-bottom: 0em; /*次の段落との余白は取らない*/ } STRONG{ /*白黒反転*/ color: white; background: black; } − − − − − − − − − − − − −
本書は,CSSを用いたHTML文書のスタイル調整を解説するものです。CSSの仕様を完全解説するのはもちろんのこととして,スタイル指定の考え方にまで言及します。
ただし,本書は対象読者を「すでにWWWに馴染んでいる人」「テキストファイル,テキストエディタなどを扱える人」を対象にしています。できれば,HTML文書を記述したことがある方が望ましいです。そのことにはご注意ください。
1章では,CSSの簡単な紹介とともに,HTML発達史とWWW発達にともなうHTMLの混乱の歴史を紹介します。HTMLに対するCSSの位置づけやCSSの重要性について,順を追って説明しています。
2章では,HTML文書の本来の役割−−文書の構成を明示すること−−に関して,いったんSGMLに立ち返って解説します。「タグとは」「属性とは」などの表面的な部分ではなく,「文章内容を伝達するために,何故SGMLが必要なのか」「HTMLは,SGMLの利点をどのように継承しているのか」などを理解できるように解説します。これによって,自然にHTML文書の記述法方を飲み込めるようになるでしょう。
3章では,もう少しだけHTMLに関する取り決めを説明します。
4章では,CSSによるスタイルシート記述の文法的な側面を解説します。
5章では,CSSが規定する個々のプロパティのうち,中心的に用いられるvisualメディア用のプロパティを解説します。
6章では,実際にスタイルシートを構築する上で重要になる概念や,無理の無いシートにするための「考え方」を紹介します。
7章では,新たにCSS2で導入された「印刷」「TABLE」「音声再生」などのためのプロパティを解説します。
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141-8676東京都品川区上大崎3-1-1 JR東急目黒ビル 技術評論社書籍編集部「スタイルシートWebデザイン」質問係